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今日も野球日和

第30回 「歴史に1ページ刻んだ『王シフト』」

 弱小球団の広島が、巨人のホームランバッター王貞治を迎えるために考案したのが、「王シフト」である。王を打席に迎えると、広島の内外野守備陣は一斉に右寄りに位置を移動した。

 1964年(昭和39年)5月5日。後楽園球場での対巨人戦。球場には王の5打席連続ホーマーを見ようと、4万人の大観衆が詰めかけていた。王は前の試合(5月3日の対阪神戦)で、史上初の4打席連続本塁打の記録をつくっていた。

 この時点で王の成績は打率4割0分5厘、17本塁打、39打点でリーグ三冠。まさに手が付けられない状態だった。

 「王を打ち取るには…」。広島の白石勝巳監督は、試合を度外視して考え込んでいた。左腕投手あがりの川本徳三スコアラーから手渡された一枚の記録紙がヒントになった。当時の松田耕平オーナーが東洋工業(現マツダ)のコンピューターを駆使し、王のデビュー戦以来の打球方向を集計したデータである。

 一回裏。打席に王を迎えると、広島の外野陣はライト方向へ極端に移動を始めた。超満員の球場全体がその光景を見て、一斉にどよめいた。ライトの森永勝也は定位置に、センターの大和田明が右中間方向に、レフトの山本一義がセンターの位置に就いた。内野手もそれぞれ右方向へ動き、遊撃のポジションに立った三塁手を除き、フィールドの右半分に6人の野手が守る異例の陣形だった。

 結果はどうだったか。左腕大羽進の2球目をとらえた王の打球は、一塁フライとなって大柄な藤井弘のミットに吸い込まれた。この時間、場内の大きなため息とともに王の大記録は途絶えた。

 この試合で王は4打席無安打。次の試合では18号を打たれたものの、「王シフト」以降の広島戦での王の成績は打率2割9分1厘、7本塁打。チームもこの年、対巨人戦に初めて勝ち越した。王の打撃フォームを崩すことと、タイミングを狂わすことを狙ったこの苦肉の策≠ナある「王シフト」は、広島が発案者となって各球団に波及した。それでも王は一本足打法≠変えず、ガラ空きの左方向を狙うことなく、右方向へのホームラン打ち続けた。王にしてみれば、スタンドに打球を放り込めば、守備位置の移動を気にする必要もなかったのだ。ただ、コンピューターが考案した「王シフト」は、プロ野球の歴史の1ページに記された。

プレスネット2016年8月6日号掲載


   
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