■ 2017年3月18日号

なっとく スペシャル対談 絵本が心を育てる理由

大人と子どもの温かいつながり

絵本作家 朝川照雄さん
広島大学大学院教育学研究科 難波博孝さん

 絵本は、ただ「面白い」というだけでなく、「心を育む」といわれている。小さいうちから本に触れることは、子どもの成長にどのように影響するのか。広島大学大学院教育学研究科の難波博孝さん、絵本作家の朝川照雄さんの対談から学ぶ。(聞き手/FM東広島パーソナリティー・吉岡直子)

―絵本の魅力は。

朝川 絵本は想像力、言語力を育てます。冒険などさまざな疑似体験ができますよね。

難波 そうですね、想像力を育む力は大きい。本は虚構の世界、大人は現実世界。子どもは知らず知らずに虚構と現実の世界を行き来し、その 区別がつくようになる。

―ファンタジーと現実の境目ができる。

難波 はい。虚構の世界と現実の世界の両方の想像力が培われる。加えて、小さい子の場合は必然的に大人が読み聞かすことになります。子どもと大人と絵本のトライアングルで、子どもは温かい関係の中で育っていく。それは子 どもの人生にとって、大きな力となります。

朝川 絵本は大人が選んで読んでやるもの。親、兄弟、じいちゃんばあちゃん、生活を共にしている人が読んであげるといい。1対1で読んでもらうのが思い出。言葉を感じ、それが頭に刻まれ、想像力を育みます。

難波 本当、大事なこと。一人で本を読む時は、頭で文字を声にしている。読み聞かせをしてもらった子は、声にしやすいため、好んで一人で本を読む。読み聞かせでたくさんの語彙を生で聞くということは、子どもの成長に大 事。

―テレビやビデオは子ども一人で見ることができます。

難波 一方通行では思い出に残りにくい。絵本はメディアの中でも、必然的に人が介する媒体。それだけ人とのつながりを強める。絵本を持った時の重さ、手触り、全てが体験になる。

朝川 デジタル絵本もあるが、大きさ、厚さ、質感は、紙の本ならでは。

難波 授業で絵本を紹介する時に、学生に読んだことがあるか聞くと、誰がいつ読んでくれたかを覚えている学生がたくさんいる。読んでもらったという経験は、人の心の優しさの根本にあるものだと思います。

―どうやって絵本を選ぶといいですか。

朝川 子どもの行動範囲に合わせた内容がいいですね。2〜3歳は家の中の話。4〜5歳は保育園での遊びや車に乗ってお出掛けなど、成長に合わせて選ぶことが大切。

難波 そうですね。0〜12歳の子どもの成長はさまざま。子どもが手に取って楽しむ本がいい。

朝川 図書館の絵本のコーナーに行って、子どもに自由に選ばせてみて。読んでやって、最後まで聞く本は借りて帰る。家でも繰り返し読んでとせがむ本は買ってやるとい いですね。子どもに合う本に出合うということは、宝を見つけたようなもの。そうすると、大きくなった時に「読んでくれた」ときっと思い出す。そうして絆が深まっていくと思う。大人になってつらいことにぶち当たった時に乗り越える力が付く。

―朝川さんは、絵本を作る時、声に出して書いていると聞きました。

朝川 黙って書いていくと不安。声に出して、言葉の質感、発音のしやすさなどで言葉を選んでいく。絵本「ゆうくんだいすき」の一文、「おかあさんのむねはふんわり あったかいいにおい」は、最初は「おかあさんのむねはなんてあたたかいのでしょう」だった。これだと想像が膨らまないですよね。

難波 「ふんわりあったかいいにおい」の「ふんわり」が想像を広げる。子どもたちは、自分のお母さんを思い出す。

朝川 同じ絵本でも、それぞれの子どもに合う絵本になる。

―上手に読まないといけないと思います。

難波 どんな本でも、どんな読み方でも大丈夫。本を介して、子どもと大人が一緒に楽しむ、時間を使うことが限りなく貴重な体験になる。

Asakawa Teruo

東広島市西条町の書籍販売(株)アスクライブラリー代表。絵本作家としても活躍。代表作「ゆうくんだいすき」などを出版。小中学校での読み語りをして38年。
●おすすめ絵本「ゆうくんだいすき(作/朝川照雄、絵/長谷川知子、岩崎書店)」。仕事に行くようになったゆうくんのお母さん。ゆうくんは保育園でもお風呂でもお母さんを思い出す。思わず子どもを「ぎゅー」としたくなる絵本。

Namba Hirotaka

広島大学大学院教育学研究科初等カリキュラム開発講座教授。全国大学国語教育学会全国理事。日本読書学会会員。昨年、読書学会奨励賞を受賞。
●おすすめ絵本「ウエズレーの国(作/ポール・フライシュマン、絵/ケビン・ホークス、訳/千葉茂樹、あすなろ書房)」少年・ウエズレーが自分だけの文明を創る、壮大でわくわくするストーリー。

二人の対談は3月18日(土)15時台に、FM東広島(89.7MHz)で放送します。朝川さんによる「ゆうくんだいすき」の読み語りもあります。


大人が読んでも面白い絵本

●しろいうさぎとくろいうさぎ

文・絵/ガース・ウイリアムズ
訳/松岡享子   福音館書店
 しろいうさぎとくろいうさぎは、毎日一緒に遊んでいた。ある日くろいうさぎは、心配そうな顔をしていて…。

●はやくはやくっていわないで

作/益田ミリ
絵・著/平澤一平    ミシマ社
 「はやくはやく」ついつい言ってしまうこの言葉。この本を読むと子どもたちへの声掛けが変わるかも…。

●ものしりひいおばあちゃん

作/朝川照雄
絵/よこみちけいこ  絵本塾出版
 ゆうくんとひいおばあちゃんは95歳も離れている。親子4代の心温まる絵本。

●おこだでませんように

作/くすのきしげのり
絵/石井聖岳    小学館
 ぼくは、いつも怒られてばかり。そんなぼくが、七夕の短冊に書いた願い事とは…?


読み語りのこつ

 小さい子どもに読むときは、ページをめくる時のタイミングが大事。失敗すると子どもは逃げます。

 子どもを見ていると、読み手が読み終わっても、絵を見ている子がいます。見ているときに早くめくると 「待って」と止めることも。子どもの目が読み手に来た時がめくるベストタイミング。また、子どもがよそ見したときにめくります。

 1対1で読む時も、目が見えるように抱っこして読むといいでしょ う。

 読み手は、つい自分のペースで読んでしまいがちですが、子ども主導で読んであげるといい。半分、子どもの気持ちになって、自分も楽しみながら読むといいですね。


バックナンバー

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