■ 2017年9月14日号 西条酒特集

西条・山と水の環境機構「里山保全し酒水守る」

産学官民が協力 龍王山を手入れ

 煙突の立ち並ぶ酒蔵地区。写真上側は龍王山麓(2007年、船越雄治撮影)。酒蔵地区では龍王山からわき出る地下水を酒の仕込み水に使っている。地下水が流れ下るにつれ、西条砂礫(されき)層のミネラル成分が少量溶出し、さらに砂礫層のろ過作用でよりきれいな水になり酒蔵地区に供給。ミネラルバランスの良い酒造好適水が生成される、という

 水を原料とする酒づくりにとって必要不可欠なのが、里山の保全。その水と里山を結び付ける形で、西条酒造協会が中心になって平成13年に設立したのが、「西条・山と水の環境機構」(理事長・前垣寿男賀茂泉酒造蔵主)だ。産学官民が協働して、森を育て、水を守る取り組みは、全国的にも珍しく注目を集めている(日川)

 発足のきっかけとなったのは、松枯れなどによる山の荒廃。「環境をテーマに地域貢献活動をしたい」。前垣理事長の呼び掛けに西条の各酒造会社が理解を示した。西条酒造協会加盟の各社が酒の出荷量1・8リットルに付き1円を拠出することで、年間約700万円の活動資金を確保した。

 活動は、JR西条駅北側の龍王山(標高575m)にある憩いの森公園での下草刈りや、除伐などの手入れを柱にした。広葉樹を育て山の保水力を高めることで、西条の酒蔵が取水している、龍王山の麓一帯からしみこむ地下水を潤沢にするのが目的だ。手入れで出た除伐材はチップにして酒米づくりの水田の堆肥にしたり、炭にして川の浄化に役立てたり、と循環する仕組みも構築した。

 山のグラウンドワークと名付けた山の作業は、年間4〜5回のペースで開催。大学や大手企業、行政、市民らの協力を得ながら継続的な活動を続けてきた。市内外の高校生や大学生らも作業に参加するなど、裾野も広がっている。

 作業はこれまで81回開催。延べで約1万6000人余りが参加、約19へクタールを手入れした。一方で、小学生を対象にした源流探訪など水のグラウンドワークも定期的に開き、子どもたちの社会教育も支えている。

 取り組みは、一定の成果となって表れてきた。大学の研究者が継続的に龍王山の植生や地下水の水質を調べたところ、水質の悪化はほとんど見られなかった他、冬季に表層水が増加する傾向が認められ、森林整備で地下水の涵養(かんよう)能力が高まっている可能性が示唆された、という。

 龍王山を源流とする西条の地下水は、きれいで腐りにくい中硬水。前垣理事長は「水は酒屋だけのものではなく、市民共有の財産。地域資源としての山、地下水が後世まで保全できるよう、今後も地道に活動を続けていきたい」と目を輝かせる。


酒蔵地区の北側には龍王山
「西条・山と水の環境機構」
シンボルマーク

 身近にある山や水や田んぼをいつまでも大切にしていきたい、との思いが込められている。マークは西条酒の商品の一部にも表示されている。


木を切るのは大変な作業だけど、山を守るためには大切なこと

▲酒づくりに欠かせない水を守るため、山の手入れ(山のグラウンドワーク)に汗を流す参加者


「川の生き物調査」でサワガニやヤゴなどの生き物が採取できたよ!

▲小学生を対象に行われている水のグラウンドワーク。自然観察などを通して山と水の関係を学ぶ


 憩いの森公園で山を手入れする中で発見した湧き水を、多くの人に味わってもらおうと、2006年に水飲み場として整備した「西条・龍王の名水」。湧き水は中硬水になる前のさわやかで良質な軟水だ。来園者は水を飲んで休憩したり、ペットボトルに入れて持ち帰ったりすることもできる


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