孤狼の血 「昭和の男の熱さを感じて」

5.12 広島・呉で全編撮影の映画がついに公開

 オール広島ロケで撮影された白石和彌監督の最新作映画『孤狼の血』が、5月12日にT・ジョイ東広島他全国で公開される。同作の広島キャンペーンが、昨年12月27日、ホテルグランヴィア広島で行われた。この日は白石監督と出演者の役所広司、阿部純子、原作の柚月裕子さんの4人が出席した。久しぶりに広島を訪れた4人に、映画に込めた思いや撮影エピソードについて話を聞いた。(文・FM東広島パーソナリティー上利悠貴、写真・宮ア優奈)

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写真左から、白石和彌監督、岡田桃子役の阿部純子さん、大上省吾役の役所広司さん、原作の柚月裕子さん

 ―今作は『仁義なき戦い』をほうふつとさせるが、どこを目指して作ったのか。

白石 東映から、昔のようなエネルギー、勢いのある作品を作らないかと声を掛けてもらったのが始まり。ただ、作るのであれば昔の作品や今勢いのある韓国映画を越えるものを作りたかった。

 ―出演した感想は。

役所 白石監督から日本映画を元気にしたいという思い、そして原作のエネルギーや男らしさを感じた。役作りは、物語の舞台・呉の言葉を体に染み込ませるところから始めた。大変ではあったが、その言葉は大上を演じる上で支えになった。今作は男らしい芝居が多かったのでそこを思う存分楽しめた。

阿部 白石監督やスタッフ、出演者の方々に支えてもらいリラックスして撮影できた。呉弁は事前に練習用のCDをもらい、聞き込んで役に臨んだ。役所さんが自分のせりふのイントネーションまで覚えていたことには驚いたが、頼りになる先輩だと感じた。

 ―映像化された作品を原作者の立場から見てどうだったか。

柚月 良い意味で驚いた。原作にもある圧倒的な熱量を感じられたし、活字とはまた違う表現にとても感動した。俳優たちのスクリーンの中での熱い芝居にも感銘を受けた。

 ―広島で思い出に残っている場所は。

阿部 撮影にも使われた呉の商店街は親しみやすい雰囲気で印象に残っている。お好み焼きも食べたが、とてもおいしかったことも思い出深い。

役所 呉の街は海、港があり絵になる場所が多く魅力的だと感じた。撮影の合間に地元のスーパーに行き、お総菜を買ったのも良い思い出だ。

 ―物語の舞台は昭和。この時代の人々をどんな思いで描いたのか。

白石 自分が撮ってきた作品は昭和の匂いがすると言われることが多かった。昭和の男の背中を見て育ったからだと思うが、この作品にはそこが生かされている。昭和の男のかっこよさを見てもらいたい。

柚月 小説を書こうと思ったきっかけは昭和の男たちの熱さ、必死さを伝えたかったから。今作からそうした熱量を感じてほしい。

阿部 今作では昭和の男性社会の中で強くしなやかに生きている女性が登場するが、彼女たちの生きざまはかっこいいと感じた。

役所 登場人物たちは皆、熱くて必死。そうした人間を描いた作品も必要。見てくださる方がどう感じるか、とても楽しみ。

 今作のキックオフパーティーが、12月27日、広島市内で行われた。映画完成後初のイベントには、白石監督と出演者の役所広司、阿部純子、さいねい龍二、原作者の柚月裕子さんの5人が参加。映画の完成を祝い、湯ア英彦広島県知事、松井一實広島市長、新原芳明呉市長も駆け付けた。集まった観客を前に完成を報告し、オリジナルカクテル「ブラッディウルフ」で乾杯した。
>>キックオフパーティー 「広島から旅立つ作品愛して」


[ 呉の街と共に]

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(C)2018「孤狼の血」製作委員会

 2017年4月16日。クランクインを翌日に控えた役所広司、白石監督他オールスタッフ総勢50名が、撮影の安全祈願のため広島県呉市内の亀山神社を訪れた。翌4月17日、クランクイン。撮影は本編序盤、街頭を歩く大上(役所広司)と日岡(松坂桃李)のシーンからスタートした。5月19日、黄ビル前の堺川沿い。本編終盤、無数のちょうちんの下で出店が立ち並ぶ夏祭りの風景の撮影。現場は総勢100人の地元エキストラと見学のギャラリーによって本物の祭りさながらのにぎわいとなった。そして、翌20日、呉市川尻町・真福寺。瀬戸内海を望む高台に位置するこの寺でクランクアップを迎えた。

[ ロケーションの臨場感]

 呉市北部にそびえる灰ヶ峰。眼下に市街を一望できるこの標高737mの独立峰の山頂では、大上、日岡、一之瀬による本編後半の抜き差しならないやり取りが撮影された。大上や日岡らが勤務する呉原東署は、内観・外観ともに呉市内の旧水道局の建物が使われた。この一角を使い、伊吹吾郎演じる服役中の尾谷組組長・尾谷憲次の登場シーンも撮影された。市街地のシーンの撮影は主に呉市の中通商店街周辺の地域で行われ、黄ビル内の空き店舗には、真木よう子演じる高木里佳子が営むクラブ「梨子」のセットが組まれた。この他、上蒲刈島の海水浴場県民の浜≠ナも撮影が行われた。

[ シナリオ― 映画の孤狼たち]

 原作の柚月裕子が「映像と小説の面白さは別物」と語る通り、小説だからこそ♂ツ能だった仕掛けを、映画では大胆に解体し、別の視点から形成した新たな謎≠ニ新たなラストシーン≠ェ用意された。「登場人物たちの迷い≠ェ描ける物語だと感じた。そこで原作の大上と日岡の関係性は外すことなく、新たな謎解きを加えた。日岡の変化と成長を軸に、映画ならではの狼たちが描けたと思います」(脚本家・池上純哉)。そこで機能する要素のひとつが阿部純子演じる映画版オリジナルキャラクター・岡田桃子。映画の孤狼たちの魂は、いくつもの美学と挑戦の交錯から生まれ出たものである。


「これぞ映画」を実感 刑事と暴力団の戦い描く

呉と広島でロケ

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(C)2018「孤狼の血」製作委員会

 戦後の広島を舞台に、暴力団同士の抗争を描いた映画『仁義なき戦い』の誕生から45年。その映画のシリーズを制作していた東映が、満を持して挑んだアウトロー映画が『孤狼の血』だ。久しぶりに「これぞ映画」「これぞ東映」を実感させる作品といってもいいだろう。

 作品は呉市を連想させる1988(昭和63)年の呉原市が舞台。呉原東署の2人の刑事が、暴力団系列の金融会社社員の失踪事件を突破口に捜査を本格化させる中で、刑事のプライドと極道のプライドを賭けた戦いを描いていく。

 見どころの一つが、生々しいバイオレンス描写。近年の日本映画界では、映画の製作過程で生じる「忖度」が増えて、敬遠されがちになっているシーンに、真正面から切り込んでいる。久しぶりに映画だからこその表現を堪能できる作品だ。

 単なる抗争映画ではなく、昭和の時代に色濃く残っていた人間の義理と人情を、たっぷりと描いているのも興味深い。ロケは呉市や広島市で敢行。アナログが支配的だった昭和という時代の熱気を、画面から感じ取ることができるのも醍醐味だ。

 原作はミステリー作家の柚月裕子さんの同名小説。小説も掛け値なしに面白かったが、映画も期待値以上。映像ならではのど迫力の世界を白石和彌監督が見事に描き切っている。

 (文/日川剛伸)


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(C)2018「孤狼の血」製作委員会

全てにおいて一枚も二枚も上手

「最高の映画だ」

 「これまでにない映画で、本当に良い作品だから、見てごらん」と、東映の岡田祐介会長に言われ、試写会に行ったのだが…。原作が直木賞候補に選ばれるだけあって、その描写には圧倒され続けた。この映画を見るまでは『アウトレイジ』がすごいと思っていたが、暴力性、リアリティー、迫力の全てにおいて『孤狼の血』が一枚も二枚も上手だった。

 このタイプの映画がお好きな方にはもってこいの最高の映画と断言したい。

(文/吉田実篤)


血沸き肉躍る、男たち渇望の映画

豪華俳優陣が暴力団対策法成立直前の広島の架空都市・呉原で大暴れ

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(C)2018「孤狼の血」製作委員会

 昭和63年。暴力団対策法成立直前の広島の架空都市・呉原を舞台に、刑事、やくざ、そして女が、それぞれの正義と誇りを胸に、生き残りを賭けて戦う生きざまを描いた映画『孤狼の血』。決して地上波では許されない暴力描写とエロス、耳にこびりつく怒号と銃声。見る者は、生々しいまでの欲望にあぶられ、心は必ずやけどする。『警察小説×仁義なき戦い』と評される同名原作を映画化した本作は、昨今コンプライアンスを過度に重視する日本の映像業界と現代社会に対する新たなる挑戦であり、数々の【衝撃作】を世に送り出してきた東映が放つ【超衝撃作】だ。

 手段を選ばない捜査方法から、やくざとの癒着など黒いうわさが絶えない刑事・大上省吾役に役所広司。大上のやり方に疑問を持ちながらも徐々に影響を受けていくエリート新人刑事・日岡秀一に松坂桃李。五十子会、加古村組から抗争を仕掛けられる老舗・尾谷組の若頭・一之瀬守孝役に江口洋介。大上とは旧知の仲で、捜査に協力するクラブ「梨子」のママ・高木里佳子には真木よう子。さらに強い凶暴性を帯びる加古村組の若頭には自身初の極道役挑戦となる竹野内豊。この他、ピエール瀧、中村獅童、石橋蓮司、滝藤賢一、音尾琢真、駿河太郎、中村倫也、阿部純子、矢島健一、田口トモロヲら、日本屈指の俳優陣による演技合戦がスクリーンにさく裂する。

 原作は第69回日本推理作家協会賞受賞をした柚月裕子著「孤狼の血」(角川文庫刊)。柚月自身が「『仁義なき戦い』があったからこそ生まれた小説」と語る原作を、そのDNAを受け継ぐ東映が激情の映画化。呉原のモデルとなった呉を中心にオール広島ロケを敢行し、渇いた昭和の世界を映像に収めた。


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