理念は地域貢献 中小水力発電設備を製造

昨年が創業70年 市場開拓で新たな一歩を

 今年は東広島市八本松町原に八本松工場が完成して50年を迎える。西日本で唯一の中小水力発電用プラントメーカーだ。近年、再生可能エネルギーの有効活用が注目を集め、水力資源の重要性が再認識される中、環境にやさしい地域社会に貢献できる企業を目指す。(日川剛伸)


正面玄関。今年が創業71年目。西日本で唯一の中小水力発電用プラントメーカーだ

 創業は1947年。創業者の織田史郎が、戦後の復興期に、農山村に電気を供給する目的で、山村にある小河川を利用した小水力発電所の建設を推進したのが事業の出発点となった。農村に水力発電設備を提供し自家用電力を賄ってもらうだけではなく、農協や自治体が小水力発電を事業として立ち上げるよう促した。

 創業からの20年間で中国地方を中心に74カ所の小水力発電設備を建設。自治体や農協が発電した電力は中国電力が全量を買い取ったことで、事業としても成り立っていった。一時期は、石油による火力発電所の興隆で経営危機に陥ったが、73年〜79年のオイルショックを好機として捉えた。資源の乏しい日本で、水力の有効利用を提言した「水力開発キャンペーン」を展開。エネルギーの国産化推進を訴え、経営を立て直した。

 農協や自治体の小水力発電事業は、現在、会社の追い風になっている。2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)に伴い、売電価格が大幅に上がったため、農協や自治体から小水力発電設備の引き合いが増えているからだ。 16年度の売上高は40億円を超え過去最高となったという。


縦軸クロスフロー水車

 「地域に貢献する企業に」。創業者の理念を引き 継ぎ、これまでに248台の水力発電設備を納入(18年3月末日現在)。東広島市では、福富ダムにダム式発電設備を、東広島浄化センターに浄水場発電設備を、志和町に水路式発電設備をそれぞれ納入している。水車は、川の流れの高低差や水量で、形式や大きさも異なってくるため、同じ製品は一つとしてない。このため、設計から製作、アフターサービスまで一貫した体制を整えているのが強みだ。

 創業70周年だった昨年を一区切りに、新たに10年後のビジョンを打ち出し た。30億円の売り上げをコンスタントに計上していく会社になることだ。前述のFITに伴う売上アップは、あくまで一過性のものに過ぎないという認識だ。既存の水力発電設備の修繕や維持管理(メンテナンス)をベースにしながら、水車の新設・更新を定期的にこなし、売り上げを上げていくことを思い描く。


横軸フランシス水車

 そのためには、新たな市場開拓が急務となる。14年には筆頭株主が中国電力から、発電機を手掛ける電気メーカーの明電舎(東京都)に変わった。これまで、水力発電設備の納入は中国地方が中心だったが、明電舎との提携を強めながら、手掛けていなかった地域にも目を向けていく。山田哲夫社長は「中国地方から全国へ展開することが、会社発展の第一歩」と力を込める。

 国内の全発電量に占める水力発電の割合は8〜9%。山田社長は「この比率は今後も変わらない。ただ、水力発電は地方再生の分野で可能性を秘めている」ときっぱり。

 小水力発電で得た電力の売電収入で集落の活性化に役立てている岐阜県郡上市の集落を例に挙げながら、「イームル工業の原点は地域貢献。小水力発電が地方再生の切り札になれば」と願う。


採用状況や求める人材は? 山田哲夫社長に聞く

大学と連携し、人材の確保を 地元志向の学生を発掘したい

 昨年、創業70年だったイームル工業。次の新しいステージを見据え、新卒者の採用はもちろん、中途採用にも積極的に取り組んでいく意向だ。社員数は契約社員を含め117人(2018年4月1日現在)。山田哲夫社長に採用状況や求める人材像などについて話を聞いた。


「大学と連携しながら人材の確保に努めたい」と話す山田哲夫社長
 ―採用状況は。

 大学新卒者は毎年2人〜3人程度採用している。以前はリクナビに頼っただけの募集活動だったが、近年は積極的に大学に出向き企業PRに努めている。売り手市場で中小企業には厳しい状況が続くが、大学との連携を図りながら優秀な人材を確保していきたい。募集は技術系の学生が中心だが、数年ごとに文系の学生も採用している。中途採用は、新卒者を補完する形で適宜採用している。

 ―求める人材は。

 第一に環境問題と水力発電に高い意識を持っている人。中小企業で自分の能力 を発揮したい、と願うようなバイタリティーを持った学生も求めている。東広島に本社のある会社として、東広島市が主催する企業説明会に出向き、地元志向の強い学生も発掘していきたい。性格的には前向きな人を求めている。

 ―近年は働き方改革が叫ばれています。

 働き方改革の取り組みを推進していくため、今年から広島県が行うセミナーに参加している。働き方改革の社内の推進役を担うキーパーソンを育成するもので、県の働き方改革を実践している企業としての認定に向けて取り組んでい る。

 ―東広島市での会社の位置づけは。

 東広島市には、1968年に八本松工場を竣工し、90年に本社を移転した。従業員には東広島市出身者や東広島市に転居してきた人たちも多く、何らかの形で東広島市に貢献できれば、と思っている。弊社のような市内の中小企業が連携して地域でできることも模索したい。例えば企業内保育の実現は、一企業では難しい面もあるが、何社かが連携して取り組めば託児所のような施設の運営は可能なのではないか。女性が出産後も継続して働けるような環境を整備することは、会社にとっても東広島市にとっても財産になる。


沿 革

イームル工業の本社(空撮)

1947年 広島市銀山町にイームル商会設立
1950年 イームル工業に社名変更
1968年 八本松工場完成
1972年 本社を広島市丹那町に移転
1990年 本社を八本松町原に移転
1996年 最大級水車の納入
1999年 東京支店開設。水中タービン発電機ライセンス取得
2002年 水中タービン発電機納入
2010年 機械製作工場建設。両掛フランシス水車納入
2015年 新本工場完成
2017年 創業70周年


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