ラヒル・ハッサン工場長に聞く

広島工場で最先端の半導体量産
「東広島市の成長に寄与したい」

 米国半導体大手のマイクロン・テクノロジー(以下マイクロン)を親会社に持つマイクロンメモリジャパン合同会社の広島工場/広島開発センター(以下広島工場)が東広島市八本松町吉川の吉川工業団地内にある。広島工場は、半導体メモリであるDRAM製品を開発・生産する、マイクロンの最大の製造拠点の一つだ。ラヒル・ハッサン工場長に話を聞いた。(日川剛伸)


【プロフィル】
 ラヒル・ハッサン 1995年、マイクロン入社。米国のバージニア工場とシンガポールの工場でファブダイレクターを歴任。その後、シンガポールでMCT‐FEのバイスプレジデントを務め、2018年7月、マイクロンメモリジャパン広島工場のサイトリーダーに就任。

 ―前身のエルピーダメモリを買収して丸5年が経過しました。

 買収後、現有世代DRAMの製品は、台湾にある工場で生産する体制を整えた。広島工場では、次世代DRAMと、次々世代DRAMの開発、量産を進めていく。次世代は今年から、次々世代は来年からそれぞれ量産規模の拡大に踏み切る。

 ―最先端の半導体投資に踏み切る理由は。

 スマートフォン(スマホ)やタブレット、自動運転車などに不可欠な半導体の需要が活発なのと、顧客の求める製品が複雑・高度化していることだ。それに対応するためには、工場の拡張と最新鋭の半導体製造 装置の導入は不可欠となる。

 広島工場には、これまでも大規模な投資を実行、半導体生産に使うクリーンルームなどを増強した。次から次へと次世代のチップを求める顧客の需要を視野に入れると、今後も大型投資は継続するだろう。

 ―広島大とはパートナーシップ関係にあります。

 マイクロンが設立した財団を通じて、強固な関係を築いている。マイクロンの技術者や研究者がメンター(指導者)として広島大の大学生や大学院生たちをサポートできる枠組みがあるほか、広島大の女性研究者 への支援や高校生を米国に派遣したりしている。これらの取り組みを支援するため、財団から計15万ドルを寄付している。

 ―東広島市では産学金官連携に力を注いでいます。

マイクロンが製造しているDRAM

 マイクロンは、各国に工場を有するが、どの工場も、雇用を創出したり、環境に貢献したり、と地域で重要な役割を果たしている。広島工場とて例外ではない。東広島市と活発なパートナーでありたいし、市の成長に寄与したいと思っている。

 広島工場は、マイクロンの最先端の製造拠点の一つ。世界で使用されるDRAM製品の生産には、イノベーション(技術革新)は不可欠となる。さきほどの広島大との連携もそうだが、産学金官の連携で、東広島市から世界に誇れるDRAMの新技術が創出できることを期待している。

マイクロンが作っているDRAMって?

 いつでも書き込み・読み出しが可能な半導体メモリ。電子機器を動かす上で必要となる、文字や画像といった情報をためておく役割を担う。DRAMは大容量を実現できるため、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲームなどあらゆる電子機器に使われている。

記者の目 夢語るリーダーに期待

東広島市八本松町吉川の吉川工業団地内にあるマイクロンメモリジャパン合同会社の広島工場/広島開発センター

 半端ない目力で未来の広島工場のことに触れる姿が印象的だった。理想(夢)を語る人はリーダーたる条件の一つであり、常に最新のテクノロジーに必要な製品の開発・生産が求められる広島工場にうってつけの指揮官といっても言い過ぎではないだろう。

 取材中、何度も口にしたのが「イノベーション」という言葉だ。新産業創出をまちづくりの柱に掲げる東広島市の思惑とも一致する。連携次第では、世界に人材のネットワークを持つマイクロングループが東広島市に及ぼす影響は図りしれないだろう。東広島市がアジアの《シリコンバレー》になり得るのか。「市の成長に寄与したい」。凛とした表情で言い切ったハッサン氏の言葉に期待したい。


ラヒル・ハッサン工場長に聞く「リクルート・人材育成戦略」

技術者を積極雇用


広島工場内のクリーンルームでDRAMを製造


広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所
 ―広島工場が求める人材は。

 マイクロンは、人、イノベーション、粘り強さ、コラボレーション、顧客第一を会社の価値として掲げている。会社の価値に見合う人に入社してほしい。平たく言えば、人を大切に、技術革新に挑戦し、粘り強く問題解決に当たり、チーム内の協力を惜しまず、顧客を大事にする人だ。5つの 価値は社風とも一致する。

 ―東広島市には広島大など高等教育機関が点在します。地元学生の採用計画は。

 地元の学生に限らず、日本の優秀な学生には入ってほしい、と願っている。特にエンジニアとしての才能を持った学生を求めている。来年度は次々世代DRAMの研究開発が本格化するため、1年を通じて 技術者を雇用したい。経験豊富な中途者の採用も積極的に行う計画だ。

 ―多様性を尊重する会社です。

 人材は最も重要な資産だ。管理職は人材育成に焦点を当てたピープルプログラムを作り、多様性を尊重し合う環境作りなどに取り組んでいる。また、マイクロングループで働く世界13拠点の女性社員1700人が集まるネットワークも作り、女性社員のキャリア支援も積極的に行っている。多様性を換言すれば、男女参画、ジェンダーの平等でもある。

 ―多様性にこだわるの は。

 ある課題・問題が生じても、多くの社員の意見をもとに、さまざまな角度からアプローチできるからだ。課題を解決する引き出しが多くなれば、それだけ強い会社になると思っている。

 ―社員に訓示していることは。

 半導体市場は競争が激しい。競争に勝つためには技術革新が生命線となる。技術革新の過程では、難しい問題にも直面するが、それを解決しないと未来はない。社員にはそれぞれの能力を最大限に発揮して、チャレンジしてほしいと伝えている。努力をすることで不可能を可能にしてほしい、と願っている。


東広島市の期待

市産業部・木原岳浩部長のコメント

地元との連携で波及効果に期待

 日本唯一のDRAM工場として、世界の半導体業界を牽引されており、あわせて、国内有数の大規模工場ですので、本市においても経済や雇用効果のみならず、地元大学や経済界と連携して大きな波及効果を生むことを期待しています。

 また、地域とともに歩み、共生していただくことで、サステナブルな取り組み(SDGs)においても、本市をリードする企業となっていただくことを期待しています。


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