学術研究都市・東広島市。市内の大学には学部、大学院で計約1万7000人以上が在学している。東広島市というまちは学生にどのように評価されているのか。また、大学や企業は、「大学・学生とまちづくり」「卒業後の進路」に関してどのような考えを持っているのか。東広島の通信簿第2弾は、学生が住みよいまちについて考える。(通信簿取材班)

各方面にアンケート


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地元就職率2.7% 超売り手市場で苦戦

 東広島市内の大学生の地元就職率が低いことが長年の市の課題。平成26年度の2.6%を基準値として、引き上げに取り組んでいる。平成28年度に3.4%まで上がったが、平成29年度は2.7%に下がった。市は、下がった背景を「新卒学生の超売り手市場の影響で、企業は人材確保に苦戦している」と分析。今後、広報により力を入れるとともに、マッチング率の向上に取り組む、としている。


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東広島市ではこんな取り組みも

 市内の大学生を対象にした地域体験ツアーを開催。市内各地を巡り、それぞれの地域ならではの魅力溢れるスポットや、地域と人たちとの触れ合いを通じて、自分たちの住む東広島市をより深く
理解し、愛着を感じてもらうことが目的。昨年度は福富、豊栄、志和、河内など7カ所で実施し、計94人が参加した。今年度も5カ所で行う計画。

参加者の声(抜粋)

・東広島市のいいところを発見する機会となった。
・地域の方と関われて楽しかった。
・地域の方と話ができ、歴史が知れてよかった。
・農業体験など、今までしたことがない経験ができた。


委員会コメント

魅力あるベンチャー企業立ち上げ支援を
検証委員会座長 久保田誠之

 現役大学生の思う本市の良い点・不満な点のトップは、いずれも予想通りであった。『自然vs交通アクセス』問題は大学の開校自体が地域開発を伴う以上は避けられない。

 学生は大学院を含めれば4年以上にわたり、大学キャンパスおよび通学範囲内の寮・アパートなどで生活するが、「人里から離れた静かな学術・研究環境」「教育研究以外の活動(消費、生活、文化活動)環境」という、相反する環境を同時に手に入れたいと思うのは当然である。

 その実現のためには能率的な移動手段を確保するか、または理想的な通信手段を確保することが必要になる。

 早急に改善すべきと考えられるのは、バスのネットワークのさらなる充実であろう。大学からの回答でも公共交通の問題が指摘されている。ただ、一年間の「大学暦」を考えれば授業のある繁忙期と長期休みの閑散期があり、交通サービスを提供する側としては利用者数の大きな変動に耐えなければならない。その対応については、バス会社と地元企業、大学当局、市当局がさらに知恵を絞らなければならない。

 一方、最近のICTシステムの発展は、国による支援効果もあって目覚ましい。自然豊かな環境で子育てをし、あるいは釣りなど自然相手の趣味に興じつつもテレワーク(遠隔就労)で大都市の企業活動に参加している例は枚挙にいとまがない。今後のアンケート調査には、ICTシステムを活用した就労の形態も調査に加えていくことを考慮すべきである。

 広島大・越智学長が本紙6月20日号に掲載されたインタビューで指摘しているように、 「広島大は学術・教育の一大拠点であるのみならず、雇用や消費などさまざまな波及効果をもたらす基幹的な存在である」ことには疑問の余地はない。他の2校も魅力的で特色のある学術・教育研究機関であり、大学発のベンチャー企業が本市に生まれる素地は十分に備わっている。既に広島中央サイエンスパークを中心に起業支援が実施されているが、大学側シーズと産業界、地方財界の橋渡しをこれまで以上の厚みをもって行うなど、学生が卒業後も本市に留まりたいと感じる魅力ある企業の立ち上げ支援を実施することが肝要である。

検証委員会座長 久保田誠之
プロフィル

1954年 東京生まれ
1977年 東京工業大学工学部電子工学科卒業
1979年 東京工業大学大学院電子工学専攻修士課程修了
1979年 郵政省採用
1994年 郵政省電波部技術管理室長
1996年 米国連邦通信委員会(FCC)派遣
1997年 郵政省(省庁再編により総務省)にて標準化推進室長、高度通信網振興課長、電気通信技術システム課長、放送技術課長等を歴任
2003年 内閣府参事官(総合科学技術会議・情報通信分野を担当)
2005年 総務省四国、九州、近畿の各総合通信局長を歴任
2008年 同大臣官房審議官(放送行政を担当)
2010年 同大臣官房総括審議官(国際・技術総括を担当)
2013年 総務省退官(6月)9月より早稲田大学研究院教授
2014年 東京工業大学大学院客員教授
2015年 株式会社テレビ朝日ホールディングス、株式会社テレビ朝日顧問
2019年 7月1日より道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)常務理事

学生の思いを受け入れられる国際的拠点に
検討委員 黒瀬川

 学生たちは大学に入学するために一生懸命勉強し、晴れて希望に胸を膨らませ東広島市にやってきた。この街で勉学に励むことはもちろんだが、充実した学生生活を送り、社会人になるための常識や社会学を身に付けることも必要である。新入生が最寄りのJR駅に降り立ったとき、駅前やその周辺を見回して、はたして学園都市らしさを感じただろうか。

 「賀茂学園都市建設基本計画」による具体的な整備内容のうち、下見学生街、新幹線東広島駅の設置、国道2号や375号バイパス、サイエンスパークなどかなりの部分は整備された。

 しかし、学術研究都市として、また学園都市として都市づくりがなされてきたかといえば、現状は国道2号、375号バイパス、ブールバール以外は狭く、満足な歩道もない道路が多い。各交差点などで朝夕の通勤通学時間帯をはじめ、渋滞箇所がたくさんあり、計画的な都市づくりとは言い難い。大学がグローバル化する中で、広島空港、新幹線東広島駅、在来線の各駅、サイエンスパークなどと各大学が有機的に連携できるような交通網の整備はぜひとも必要ではないかと思われる。

 学生のうち半数以上が県外出身者や留学生である。彼らを含め卒業生が再び東広島市に帰ってこられるような、そして学生たちの「勉強もしたい」「遊びもしたい」「アルバイトもしたい」「国際交流もしたい」、こうした思いが受け入れられるように、国際的な学術研究都市・学園都市として拠点となるような街づくりを進めてもらいたい。